明治の西洋人をも虜にした湖。中禅寺湖で湖畔の絶景を楽しむ

中禅寺湖畔に咲き競う「クリンソウ」

栃木西部に位置する奥日光の名所、中禅寺湖。いろは坂を登りきったところにあり、すぐそばには二荒山(ふたらさん)とも呼ばれる霊峰・男体山がそびえます。

中禅寺湖は周囲およそ25kmの湖で、最も深いところは163mあります。今から2万年ほど前に男体山が噴火し、流れ出た溶岩が川をせき止めて生まれました。

秋の紅葉をはじめ、四季折々の自然を楽しむことができる中禅寺湖ですが、6月になるとその湖畔に美しい花が咲き、人々を魅了します。50cmほどの細長い茎にピンクや白、赤の花弁を広げる「クリンソウ」です。五重塔の屋根に乗っている「九輪」に似ていることからその名がつけられました。中禅寺湖湖畔の千手ヶ浜(せんじゅがはま)に群生している他、旧イタリア大使館別荘でも見ることができます。

遊覧船やボートでの楽しむ中禅寺湖

のんびり歩きながら中禅寺湖とその周辺の景色を楽しむのももちろん素敵ですが、湖上で風を感じながら奥日光の自然を満喫するのもオススメです。中禅寺湖では、遊覧船とボートを楽しむことができます。

遊覧船は一周55分のクルージング。「船の駅」から出発して、菖蒲ヶ浜(しょうぶがはま)、大使館別荘記念館、立木観音前の各乗船所を経由して、船の駅に戻ります。「一周フリー周遊券」を購入すれば乗り降り自由なので、途中の乗船場所で下船し、周辺の観光スポットを巡りながらクルージングを楽しむこともできます。

ボートは、2人用~4人用の足漕ぎボートがある他、4つのコースがある定員5名の快速モーターボートも人気です。


中禅寺湖ボート

URL http://www.ckc.jp/boat.html

一木彫りの立木観音へお参りする

日光山を開山した勝道上人(しょうどうしょうにん)によって784年に建立された中禅寺は、湖の由来になったお寺で、世界遺産である輪王寺の別院です。

その中禅寺の見どころは「立木観音」。正式名称は「十一面千手観世音菩薩」で、国の重要文化財となっています。中禅寺湖の湖上に現れた千手観音の姿を勝道上人が直接カツラの立木に彫り上げたものと言われ、その木は今も地に根を張り、お寺のご本尊として祀られています。

また、中禅寺には不動明王、降三世(ごうざんぜ)明王、軍荼利(ぐんだり)明王、大威徳(だいいとく)明王、金剛夜叉(こんごうやしゃ)明王の五大明王(ごだいみょうおう)が安置された五大堂もあり、その天井には堅山南風(かたやま なんぷう)の描いた大迫力の大雲龍が見られます。

立木観音(中禅寺)

URL https://www.rinnoji.or.jp/temple/chuzenji/

英国大使館別荘記念公園、イタリア大使館別荘について

海抜高度1269mという高地にあたり夏でも快適な気候の中禅寺湖周辺は、明治中頃から昭和初期にかけて、多くの外国人が避暑地として訪れ、多くの別荘が建てられました。各国大使館の別荘も多く建てられ、現在ではイギリスとイタリアの大使館別荘が記念公園として残されています。

「英国大使館別荘記念公園」は、明治維新に影響を与えた外交官アーネスト・サトウの個人別荘として1896年に建てられ、その後大使が利用した建物を再現したものです。黒を基調としたシックな造りで、内部にはアーネスト・サトウに関する資料が展示されている他、イギリスのスコーンなどが味わえる「英国文化交流室」もあります。

「イタリア大使館別荘」は1928年に建設され、1997年まで歴代の大使が利用していました。外交官で建築家でもあったアントニン・レーモンドによる設計の本邸は、パターン模様が施された杉皮張りの内外装が魅力。周囲の自然とマッチした美しい建物です。

近代ロマンの空気を残す両大使館で、ちょっと優雅なひとときを過ごすのもいいでしょう。

英国大使館別荘記念公園

URL https://www.nikko-nsm.co.jp/british.html

イタリア大使館別荘

URL https://www.nikko-nsm.co.jp/italy.html

多彩な魅力にあふれた中禅寺湖畔へぜひ

大自然の力によって生まれた中禅寺湖。湖畔に可憐な花を咲かせるクリンソウ、一味違った景色が楽しめる遊覧船やボート、歴史を感じさせる十一面観世音菩薩や、イギリス、イタリアの大使館別荘など、中禅寺湖畔は多彩な魅力にあふれています。ぜひあなたも、その魅力を味わいに出かけてみてください。

※2019年12月現在の情報です